プリンストン大学を訪れたときである。
学校前のメインストリートであるナッソーストリートには、クラシックなショップがいろいろ並んでいるが,
その中でも一際目立ったのが”ラングロック(LANGROCK)"と云う1896年創業のトラディショナルショップである。
店内は白黒のタイルを敷きつめたしゃれた床で、衣装棚の上に飾ってあるコレクションが面白く、また、ライブラリーと称して、
かってこの店のお得意さんで、有名な作家になった人や、教授連の著書が飾ってある、というのも珍しい。
こんな事はとにかくとして、私が一番興味を引かれたのは、この店の煉瓦作りのクラシックな建物に貼られた、
古いが良く手入れされた真鍮のプレートである。
そこにはSINCE 1896と書かれ、その上に、CUSTOM TALOR & IMPORTERと記されてあった。
つまり、この店の創業当時は、レディメイドがまだなかったから、スーツやジャケットは皆カスタムメイドで作られ、
そして、ベルトやシャツ、靴、靴下などの洋品類は、アメリカでは適品がなかったので、英国から輸入されていたのだ。
その当時は、アメリカントラディショナルモデルが確立されていなかったから、
アメリカのアイビー校が、イギリスの名門校を模したように、カスタムメイドで作られるスーツやジャケットは、
非常ににブリティッシュモデルに近かったろうということは想像に難くない。
そして今日、長い歴史を経て、アメリカ独特の機能性が加味されて、あのアメリカントラディショナルモデルが完成されたのである。
アメリカントラディショナルの源流をたどって行くと、どうしても英国に行き着くのは、このような理由があるのである。